闇の中にも

亀山郁夫さんの『あまりにロシア的な。』(文春文庫、2013年、親本は1999年)です。
著者が1994年にロシアに長期滞在したときの経験を中軸にして、その中に1984年に当時のソ連当局から拘束された事件の記憶も交えた、エッセイ集というものです。
当時の、ソビエト政権が崩壊して、まだまだロシアのゆくえがどうなるかわからないときに、著者と交流する人たちが、たくましく生きているようすがみえます。
ある意味、ロシアの人たちには、政権がどういうものであっても、その中で抵抗しながらみずからの意思をつらぬくところもあるのでしょうか。この中でよく言及される、ブルガーコフプラトーノフの作品なども、そうしたところがあるように思えます。
そうした懐の深さは、よく考える必要がありそうです。