大義

松浦玲さんの『横井小楠』(増補版、朝日選書、2000年)です。幕末の思想家、小楠の生涯をたどりながら、当時起こりえたかもしれない状況を考えます。
小楠の思想の根底には、指導者は聖人でなければならない、現任者がその任にたえないのなら、やめさせてもいい、世襲前提などもってのほかという考え方があります。ある意味、民主主義を先取りしたということもできましょうか。それを、儒学的な考え方にのっとって堯舜の世という形で押し出します。現実に流されずに、あくまでも道理を押し通す。彼は新政府成立後間もなく暗殺されます。そこに、近代日本のもうひとつの可能性は消されてしまったのでしょう。