地道に

尾西康充さんの『小林多喜二の思想と文学』(大月書店)です。
どちらかといえば、地味な論文を集めているのですが、「不在地主」のモデルになった土地では、今は必ずしも作品に描かれたような階級的なたたかいとは思われてなかったことを論証したり、多喜二の一家が秋田から小樽に移住するきっかけとなった、多喜二の伯父のかかわった訴訟の実態を調べたりと、手堅い方法での考察が重ねられています。
こうした地味な積み重ねが、作家のすがたを浮かび上がらせるのでしょう。その意味で、すなおに読める論考となっています。