そろったところで

川端康成舞姫の暦』(毎日新聞社、1979年)です。
川端没後、未刊作品を刊行したものです。初出は1935年に、新聞に連載された作品です。
地方の温泉場に成長した少女、弓子が新鋭の舞踊評論家の竹友に才能を見いだされ、上京することになります。弓子には、幼なじみの国男という男の子がいるのですが、彼はいち早く上京し、弓子を迎えようとしたのですが、都会の生活の中で困窮しています。作品は、竹友が応援する千代子という舞踊家、欧洲留学から帰国して竹友の後援を受ける甲斐という男性舞踊家、この5人を軸としてストーリーが展開する、と思ったところで、作品は終わり、弓子は故郷に帰ってしまうのです。
この作品が連載されたのは、『福岡日日』『河北新報』『新愛知』『北海タイムス』だということです。当時の地方紙の読者には、東京の舞踊界を舞台にした、モダニズム的な作品は受けいれられにくかったのでしょうか。もしそうだとしたならば、1930年代後半に、〈日本的なもの〉に流れていく筋は、ここにはじまったのかもしれません。