補加

浦西和彦さんが編纂した『徳永直』(人物書誌大系のうち、日外アソシエーツ、1982年)は、徳永直の著作目録があって、重宝しているのですが、やはり、まだまだ不充分な点はあるようです。
最近発見したものを、ここに記録しておきます。
1935年10月号の『文学案内』誌に、徳永は「逆流に立つ男」という小説を発表しています。1982年の段階では、浦西さんもまだ初出誌を見られなかったようで、「未確認」のマークがついています。
この作品は、その後1935年11月に、文学案内社から刊行された『逆流に立つ男』に収録されました。ここまでは、浦西さんの調査にも載っています。

ところが、最近『文学案内』誌が不二出版によって、復刻されました。それでみてみると、どうも見覚えがあるような感じがしたのです。そこで、手持ちの徳永の単行本を探してみると、なんと、1948年6月に高島屋出版部から出た『追憶』という単行本(手元にあるのは同年9月にでた重版ものですが)、に、「研究会にきた男」として収録された作品が、この「逆流に立つ男」だったのです。浦西さんの調査では、この本は前年に『がま』というタイトルで出されたものを、紙型をそのままにしてタイトルを変えたものだそうです。この「研究会にきた男」が、「逆流に立つ男」の改題作であることは、浦西さんの調査からもれていたようです。

これひとつだけですから、論文にはならないでしょうから、ここで公表しておきます。