橋をかける

大島裕史さん『魂の相克』(講談社、2012年)です。
在日コリアンの人たちの、スポーツ分野での活躍を取材したドキュメントです。
韓国のオリンピック出場は、1948年のサンモリッツ冬季五輪からだというのです。日本は当時、敗戦国ということで、オリンピックには参加できなかったわけですが、国づくりや戦争の困難のなかで、韓国は国際舞台へと出て行ったのです。そこに、在日の人たちの、さまざまな援助があったのです。もちろん、それは競技そのものにさんかすることでもありましたし、金銭的な支援でもあったのです。
そうした事情を、著者は取材します。そこには、この100年の両国というだけでなく、北の動向も含めての複雑な関係がみえてきます。
『すばる』の5月号にも、サッカーのアン・ヨンハのことを、木村元彦さんが取材したルポが掲載されていますが、そうした複雑さを、私たちは引き受けなければなりません。単純な発言は、ことをややこしくするばかりです。