おとぎばなし

今年のセンター試験牧野信一の「地球儀」という作品でした。
祖父の17回忌で郷里に戻った主人公ですが、母や叔父からは厄介者扱いをされています。本来主役をつとめるはずの父親は、放蕩の末に家をでていて、法事にももどりません。主人公はそれでも、父代わりに施主をつとめるのですが、叔父からは揶揄されぱなっしです。
そんなかれにとって、昔の思い出として、地球儀があらわれます。かつて幼い頃、アメリカに渡った父親とのつながりを示すものとして、祖父をはじめ家族の思い出だったのです。けれども、いまとなっては単なる邪魔な物品にすぎません。かれもかつては地球儀を材料にして短編小説を書いたのですが、それも「おとぎばなし」と切り捨てられてしまいます。そうした主人公の葛藤を描いた作品です。
いちばん選択肢でもめるのは、主人公が地球儀を自分の息子の遊び道具にできるかと一瞬思う場面での、主人公の心境を聞く設問だと思うのですが、そこでのかぎは、やはり自分の作品を「おとぎばなし」として否定的にみている主人公の心境をきちんと把握できるかということでしょう。

でも、昨年の井伏鱒二といい、ちょっと古いような気もするのですが。今年は評論も小林秀雄ですから、余計に。