脱皮

エイゼンシュテイン『メキシコ万歳!』(中本信幸訳、現代企画室、1986年)です。
1930年、エイゼンシュテインアメリカに渡ったのですが、ハリウッドでドライサーの『アメリカの悲劇』を映画化しようという計画がだめになり、彼はメキシコを舞台にした映画を企画します。スポンサーにはアプトン・シンクレアがつくことになり、契約書も交わしたのですが、結局撮影は難航し、その間にシンクレア側と決裂、撮影済みのフィルムもエイゼンシュテインのもとへは届かなかったのです。
その経過や、撮影のために準備されたシナリオ、関係者の証言などを集めたものがこの本です。
当時のメキシコは、革命のためにわきたっていたようで、ジョン・リードの『メキシコの革命』とか、ドス・パソスの『U.S.A』にもメキシコ革命が取り上げられています。ソビエトロシアからも、マヤコフスキーが訪問していて、メキシコの古いものと新しいものとのせめぎあいは、国際的な関心を呼んでいたようです。
シナリオの梗概をみても、古い支配体制によるひずみと、そこからの脱皮が、いかにもエイゼンシュテイン的な展開で描かれるようで、この映画が完成していたら、どんなようすだったろうとも思います。