のんきな時代

角川の日本近代文学大系の『近代評論集2』(1972年)は、大正時代のものを集めているのですが、そのなかで、生田長江白樺派を批判したものがあります。生田は、〈自然主義前派〉だと、かれらを批判するのです。
それはそれでかまわないのですが、その中で、生田は武者小路実篤をかれの作品をふまえて、〈オメデタキ人〉といいます。けれども、生田はその作品を読んでいない、「まだ読んでいないのをちっとも悪い事だと思っていない」と平気で言い放ち、にもかかわらず、武者小路がオメダタイのはわかるのだというのです。
ずいぶんな言い草だとは思いますが、これが1916年の『新小説』に載ったものだというのですから、100年前はそういうものでも通用したのですね。