平野の風景

原武史さんの『レッドアローとスターハウス』(新潮社)です。
原さんは、自分の育った団地の生活を、戦後の思想史のなかに位置づけようとしています。以前の『滝山コミューン1974』のときもそうでしたが、みずからの生い立ちについて、懐かしさとともに違和感を感じ続けていたのでしょう。
今回も、西武鉄道沿線の団地での住民運動をメインにしながら、そことはちがった「狭山事件」だとか、中央線の国立あたりでの市民運動にふれるとか、そうしたところに記述をそらしてしまっているようなところも見受けられます。政治学の立場から、団地の興亡(「亡」は言いすぎかもしれませんが)をきっちりと分析しきってほしかったという感じはします。
スターハウスは、「星型住宅」という名称のほうがなじみがあります。幼い頃に住んでいた団地にも、その名称の建物があり、バス停の名前にもなっていましたから。タイトルとしては、カタカナ名称で対比させるしかありませんから、これでもしょうがないのですが。
せっかくの素材を、やや雑に料理したともいえるでしょう。その点ではもったいない。