沈澱

『星につなぐ道』から少し連想しての話です。
作品内容とは関係ないことですが、主人公の赴任した地域は、京都市内へでるよりも、奈良市内に行くほうが簡単(一度汽車に乗ったら乗り換えなしで行ける。京都に行くには木津で乗り換え)なところなので、主人公は恋人と奈良にけっこう出かけます。その中に、般若寺というお寺があります。奈良の市街地から少し北にいったところで、京都にむかう古い街道沿いにあります。
けっこう伝統のある古刹で、13層の石塔やら、古仏などがあります。コスモスでも有名なようです。境内には、〈原爆の火〉も受け継がれています。
この前、訪れたとき、ちょうど本堂の裏の宝物蔵に収蔵してある秘仏の公開がされていたのですが、その堂に、けっこう古い〈神功皇后三韓征伐〉を描いた絵馬が収納されているのです。天井に掲げられている(意識的に上を見なければ存在も気がつきません)ので、説明もほとんどなく、なにかしょうがないから〈飾って〉あるような感じです。
この〈伝承〉じたいがあきらかなつくりごとであるのは明白で、記紀ともに〈神功皇后〉の時代に朝鮮半島とのかかわりを意識的に設定しているところに、作為はあるのでしょうが、こうした絵馬がつくられ、掲げられているところに、日本人の朝鮮半島に対しての意識が形成されていったというのも、考えなければなりません。