初心

ドナルド・キーン『日本との出会い』(篠田一士訳、中公文庫、1975年)です。
昔の本なので、カバー見返しにあるキーンさんの写真が、とても若いのが何か奇妙な感じがしますが、1970年代初頭(この本、初出が書いていないので、正確な日付がわかりません。三島由紀夫の死について触れられているので、そのころだろうということです)に、著者がそれまでの歩みを振り返ったエッセイです。
キーンさんが、戦時中に日本兵の遺した日記を解読していたことは、その後も何度も書かれていることですが、最初の戦場体験が、アッツ島だったとは、この文章ではじめて知りました。〈玉砕〉の島から、戦場体験がはじまったことは、やはりキーンさんの日本体験に影響しているように思えます。
ホノルルにいた日本軍の捕虜に、価値観を変えるためにプロレタリア文学の本を大学から借りて読ませたというエピソードもあったそうです。そうした広がりが、たいせつなのでしょうね。