修行

アンリ・マスペロ『道教の養性術』(持田季未子訳、せりか書房、1983年、原論文は1937年)です。
著者には、東洋文庫に邦訳のある『道教』という書物もあって(ずいぶん昔に読んだので、もうほとんど覚えていませんが)、それが総論的ならば、こちらはその各論部分とでもいうべきものです。身体のなかにある〈気〉をどのように道士たちはコントロールしていたのかを、文献からさぐるものです。
道教は基本的に現世の利益を求める宗教だろうと思うのですが、そこにいたるまでの修行のありようが、こうした不老長生のための技術に流れていくのでしょう。それが、東洋医学の実践的側面と結びつくと、なにやら神秘的にも見えるのかもしれません。ふっと〈老いずして豈に長生あらんや〉と、幸田露伴がどこかで書いていたことを思い出してしまいました。訳者もあとがきで露伴のこのことばを引用していますが、民衆の信仰とは、神秘的なものばかり追求してはいないようにも思えます。家庭の安楽をねがい、未来への不安を取り除く、そこを見落としてはいけないのでしょう。