磁力

藤枝静男志賀直哉天皇中野重治』(講談社文芸文庫)です。
表題作は、志賀直哉新日本文学会の賛助会員となることを承諾しながら、中野重治安倍能成批判をきっかけに取りやめにするプロセスを追ったエッセイですが、そのほかに著者の志賀直哉関係のいろいろな文章を集めています。
初出が書かれていないので、内容でいつの文章か推測しなければいけないのは、編集上の配慮が足りないとは思いますが、それでも、著者の志賀直哉によせる思いは十分伝わります。
尾崎一雄の文章にも共通するのですが、志賀直哉という存在、強烈なひきつける力をもっているような感じがあります。そこにとらわれるのを嫌う太宰治が痛烈なことを書いたのは有名ですが、それだけの強さを持っているのでしょう。尾崎没後に、筑摩から『志賀直哉』という尾崎の文を集めた本が出ましたが(以前もっていたのですが、手放してしまいました)、これも文芸文庫ででも再刊してもらえたらうれしいものです。
ふとおもえば、今年は志賀直哉没後、ちょうど40年でした。