石を投げれば

『コレクション戦争と文学』(集英社)の、『日清日露の戦争』です。
その二つの戦争にとどまらず、黒島伝治の「橇」のようなシベリア出兵に材をとったもの、もりたなるおの「物相飯とトンカツ」のように2・26事件にふれたものと、日中戦争より前の時期のいくさにかかわるものを収録したようです(となると、なぜ石川淳の「マルスの歌」があるのかがよくわかりませんが)。
近代日本が、常に戦争とともにあったということは、さまざまな形でのこうしたかかわりからもうかがえます。宇野千代が義父(日露戦争に軍医として従軍した)から聞き書きという形で記録したものとか、久世光彦が父親の遺品から軍人としての父を回想するものとか、それだけの広がりで、日本の社会に戦争や軍隊、植民地経営がかかわっていたということなのでしょう。
だからこそ、過去をきちんとみつめなければならないし、これからに活かさなければいけないのでしょう。