強さのみなもと

海猫沢めろんさんの『ニコニコ時給800円』(集英社)です。
最近の勤労事情を描いた連作小説です。本の帯には、〈下流社会のさらに最下層で生きる〉というキャッチコピーがあるのですが、実際には読むと、〈下層〉ではあっても、女性たちはその中でしたたかに生きているのだというところが描かれているように思います。男は、マンガ喫茶に東大院卒と履歴詐称してバイトに入る人物だとか、レコードを出す金を使い込んでマジックマッシュルームを栽培するにいたる者だとか、この世界に対して何にも貢献できそうにない人たちとして描かれるところが、けっこうおもしろく読めるのです。