集まり散じて

金達寿小説全集』の話です。
第2巻は、1950年あたりから1962年くらいまでの短編を集めていて、朝鮮戦争から帰国運動まで、小説に登場します。今から見れば、けっこう複雑な思いもありますし、「委員長と分会長」のような、朝鮮総連の活動を描いた作品も、今とはずいぶん時代が違うようにもみえます。
そのなかで、作者の身辺記にあたる、「古本屋の話」(初出は『新日本文学』1955年4月号だそうです)は、作者が古本屋を開業しようとして、いろいろな人から本をゆずってもらうという話です。結局はすぐに挫折するのですが、そこには実名で、宮本顕治中野重治、霜多正次、窪田精、水野明善らが登場します。もうみんな、作者も含めて鬼籍にはいっていますが、のちに道がわかれるひとたちも、この時期には一緒だったと思うと、考えるところもありますね。