利用法

金達寿小説全集』(筑摩書房、全7巻、1980年)を月報つき、帯つきでそろいで入手できたので、作品の発表順になるように読み始めています。1952年の「玄海灘」まできました。
1943年の京城(今のソウル)のまちを舞台に、両班階層の若者、白省五と、日本で学生生活を送った新聞記者、西敬泰の二人の視点を交互に使って、当時の朝鮮の姿がえがかれる長編です。
ひさしぶりに読んだのですが、新潮社の『日本鉄道旅行地図帳』を手元においてみると、土地のようすもわかりやすくなります。
ひそかに解放運動に参加する白省五は、朝鮮北部の城津へ向かおうとして、検挙されてしまいます。城津の近くには、マグネシウムの鉱山があり、世界の埋蔵量の多くが眠っているので、そこの工場に拠点をつくろうとした、という設定になっています。たしかに、その界隈には、1943年に〈朝鮮マグネサイト開発〉という会社が、海岸の汝海津という駅から内陸に約60キロ鉄路を敷いています。
朝鮮半島北部には、そうしたレアメタルのような非鉄金属の埋蔵が多いのだときいたことがあります。それが上手に利用されていれば、世界情勢も変わっていたかもしれません。