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NHK-BSでやっていた映画『トンマッコルへようこそ』(2005年の韓国映画、音楽を久石譲さんが担当しています)です。
朝鮮戦争のはじめごろ、1950年の冬のことです。ある村に墜落した飛行機に乗っていた米軍大尉、退却中の人民軍部隊の生き残り3人、国軍兵士2名(脱走兵らしいのですが、最初を見損ねたのではっきりしません)がやってきて、偶然遭遇します。最初は対立していたのですが、村人たちが、戦争になっていることなど全く知らない(手榴弾を見ても、それがなんだかわからないようなのです)状況のもとで、いつしか一緒に農作業を手伝うようになります。
ところが、その米軍大尉を〈救出〉する作戦が遂行されます。大尉の搭乗機が〈人民軍に撃墜された〉からには、そこに陣地があるだろうから、空挺部隊を送ってから大尉を奪還、そのあとその〈陣地〉に空爆を加えるという作戦です。
空挺部隊で降下に成功した5名の兵士は、村を襲います。そこで、村にいた、南北あわせて5人の軍人は、米兵に反撃、捕らえた兵士から作戦の全貌を知ります。5人は、〈もう収穫は終わったから〉という理由で村を去り、少し離れた山の上におとりの〈陣地〉をつくり、墜落した米軍輸送機の運んでいた武器弾薬を配備し、攻めてくる米軍機を攻撃し、おとりの〈陣地〉に攻撃を集中させて村を守ろうとするのです。
実際にあったできごとかはわかりませんが、こうした形で、戦争の無意味さを描こうとしたのでしょう。ことばが通じるどうしで戦争をすることのばかばかしさと、ことばの通じない相手との戦争のおそろしさがあらわれているようにみえます。国軍の少尉は、回想シーンで、漢江にかかる橋を爆破せよという命令の実行に悩むところを思い出します。まだ北岸の住民が南岸への避難を終えていない時点なのです。その体験も、彼が〈脱走〉した一因なのかもしれません。
こういう映画をつくれるというのも、日本にあてはめるとどうでしょう。
久石さんは、『コクリコ坂』では音楽を担当していないようです。ここにも朝鮮戦争は登場しますが、そこまで縁もあるということではなかったようです。