被災

日付は変わりましたが、9月1日は1923年の大正関東地震の日です。『図書』9月号には、川本三郎さんが、「文士が経験した関東大震災」という文章を執筆しています。芥川龍之介永井荷風佐多稲子黒澤明たちの体験が紹介されています。
この地震は、相模湾沿岸地域にもおおきな被害をもたらしました。当時小田原市下曽我にいた尾崎一雄は、『あの日この日』(講談社、1975年)の中で、当時のことを回想しています。神社の鳥居は崩壊、完成したばかりの東海道線(今の御殿場線)の駅舎も壊滅、小田原の女学校にいた妹は、自宅に帰る途中で、熱海線(今の東海道線)の酒匂川にかかる橋梁がくずれているところをようやく渡って帰宅、という被害の状況とともに、その日の夕方あたりから、「暴徒が襲ってくる」という流言が流れていたことを記しています。
変わったところでは、小説中の記述で、なおかつ記憶で書くので不正確ですが、里見とん(文字化けするから)は、『安城家の兄弟』のなかで、地震のときは東京のなじみの女性のところにいて、しばらく自宅に帰れなかったが、鎌倉の自宅では妻子が津波から避難していてひどい生活を強いられていたのに、主人公は帰ってこなかったと、妻からなじられる場面がありました。
この地震津波被害の実際も、もっと語られていいはずです。