住み分け

江戸人物読本『与謝蕪村』(ぺりかん社、1990年)です。
当該人物についての、最近の論文を集成したもので、研究動向や、直近の知られていることなどを考えるための参考書的なシリーズのようなものです。
巻頭に座談会が収録されているのですが、その中で、その後岩波新書の『蕪村』を書く藤田真一さんが、萩原朔太郎の蕪村理解に関して、「研究者はそれに引っ張られてはいけない」という趣旨の発言をしています。文学者の理解には、研究者のレベルからみれば明らかな間違いが存在する場合がある、それを正すのが研究者だというのですね。
これは、文学に限らず、どの分野でも起こり得ることでしょう。『坂の上の雲』をめぐる議論にも、そういうものがありました。おたがいが、それぞれの分野をうまくつかっていくことが必要なのでしょう。気をつけなければいけません。