同じ土俵に

宮地正人さんの『通史の方法』(名著刊行会、2010年)です。
この本、実は岩波新書の〈シリーズ日本近現代史〉の最終巻として予定されていたのですが、内容がそれまでのシリーズの批判的な評価にわたっているということで、岩波書店から注文がついたので、著者は原稿を引きあげ、別の出版社から刊行したというものなおです。
内容の多くは、井上勝生、牧原憲夫、雨宮昭一の各氏の論考に対しての異論という形で、著者の幕末から帝国憲法発布までの時期に関する意見と、戦後初期をどうみるかというところが中心になっています。とくに、幕末から明治初期に関しての、攘夷派がどのような背景から生まれてきたのかというところは、井上さんとみごとに食い違っていて、歴史認識のありかたも考えさせられます。
こうした論争になりそうなものは、やはり岩波新書の一巻として出すべきだったのでは、せめて、新書でなくとも、岩波が出すのが筋だったのではないかとも思います。言いっぱなしというのは、何にせよ、どうかと思います。