長寿

熊倉功夫さんの『後水尾天皇』(中公文庫、2010年、初刊は1982年)です。
17世紀初頭、徳川幕府の権力が固まる時代に、天皇から院として宮廷に在位していた方です。徳川秀忠の娘の入内を受け入れ、生まれた姫宮(若宮もお生まれになったそうですが、早世されてしまったとか)のひとりが、明正天皇として即位されたということでも知られているでしょう。昨年から今年にかけて、大量の便乗本が出ていますから、ある意味では、これも関連本として位置づけられるのかもしれません。
もちろん、院の生涯をきちんと追った伝記ですから、別に関連づけなくてもいいのですが、院がともかくも、幕府に対して毅然とした態度をとることができたのも、院が長生きしたこともあるでしょう。なにせ、数え85歳と、昭和天皇(数え89歳)に次ぐ長生きをされたというのです。この当時、今とは生存へのハードルの高さは比較になりません。院みずからも、息子の後光明天皇を、わずか22歳で亡くしているのです。系図をみると、院の子女4人が相次いで帝位につき、4人目の霊元院から直系の相続になっていきます。そう思うと、〈生き残った〉人びとによって、人間の文化は続いてきたのだと、それはそれで、不思議な感じもします。