濫觴

坂崎紫瀾『汗血千里の駒』(岩波文庫、2010年)です。1893年に高知の『土陽新聞』に連載された作品です。
今までにも筑摩の明治文学全集などにも収録された作品ですが、文庫になったのは、テレビの影響なのはまちがいないところです。
こうした、「つづきもの」と呼ばれる、連載作品は、当時は音読されたにちがいありません。一家すべてが識字層とはいえなかった(逆に一家すべてが字が読めない家庭もわずかであった)19世紀後半の日本では、こうした形で、新聞が発行され、そこの「つづきもの」を音読することで、書かれている内容を理解したのでしょう。テレビもない時代です。
そういうわけですから、文学作品というより、それこそ大河ドラマのノベライズのように読めばいいのかもしれません。龍馬は福山か玉木か、それとも内野かと、議論してもいいのでしょうし、小松帯刀はやはり瑛太かと、現代的な配役にあわせて思い浮かべるのもいいのかもしれません。
霧島の天の逆鉾を引き抜いたのを、龍馬ではなく、おりょうさんにしたなどの潤色もありますが、そうした事実と異なる部分は、注で補えばいいでしょう。
あまり難しく考えるものではなさそうです。