上を向く

川北稔さんの『イギリス近代史講義』(講談社現代新書、2010年)です。
世界システム論にたつ川北さんは、イギリスの産業革命のおこりを、消費の拡大からみます。自己資本で工場をはじめた人たちが、今まで家内労働にしばられていた女性や子どもを雇用し始める、すると、その人たちに賃金をはらうので、今までは戸主にしかなかった可処分所得が、そうした労働をする人たちにも生じてくる。その人たちが、綿織物を買い、陶磁器をそろえ、砂糖を消費し、それが生産や流通を刺激してゆくというのです。
きっかけは簡単なものかもしれませんが、社会は動き出すと止まらない。それが21世紀まで続いているということでしょうか。知らず知らずのうちに、そのような成長を当然のものとしてゆく。そこを考え直す必要があるのかもしれません。
けれども、それは単純なことではないでしょう。川北さんからは離れますが、江戸時代は広い意味での自然エネルギーだけを使った生活だったわけです。だがそれだと、列島が養える人口は約3000万人だったそうです。それ以上になると、飢饉がおきて、人口は減ったそうです。はたしてそれでいいのか、とも思ってしまいます。