ここで跳ぶ

新船海三郎さんの『文学の意思、批評の言葉』(本の泉社)です。
『民主文学』などに書いた評論をあつめた論集で、この10年ほどの民主主義文学の動きが、同時代のものとしてとらえられています。
前にも何度も書きましたが、たとえば講談社文芸文庫の〈戦後短編〉のシリーズには、民主主義文学会(文学同盟)にかかわった作家の作品は全く収録されていません。かつて小田切秀雄は、『金達寿小説全集』(筑摩書房)の月報で、金の作品は『無視しようとしても文学的に無視できない』ものだと述べることで、〈文学として無視する〉傾向が存在することをはしなくもあらわにしました。
そうしたなかで、新船さんは、民主主義文学を守ってきた先人の業績を語り、今の民主主義文学の現状を論じます。それは、この時代に、文学がどのように存在を主張していくのかを、考えることでもあります。
そのためには、もっと視野を広く、深くしていかなくてはなりません。それを考え、前に進むために。