貫通

加藤秀俊さんの『紀行を旅する』(中央公論社1984年)です。
19世紀のころを中心とした各地への紀行文のみちすじを、加藤さんが実際に車を走らせて(レンタカーを借りたようです)今日の状況を見聞するという趣向の本です。
菅江真澄の秋田とか、イザベラ・バード会津とか、鈴木牧之の秋山郷あたりは、けっこう有名でしょうが、ほかにもいろいろとあります。そこで加藤さんが出会うのは、新しく自動車用に整備された道です。峠も多くはトンネルが開通し、かつての難渋の道も、あっという間に通過できます。
そこに、1970年代からの列島改造の動きをみることは容易ですし、そうした道路整備が、鉄道を斜陽に追い込んでいったことも事実でしょう。ともかくも、それが各地の生活を変えていったことは、認めなくてはいけません。単なる回顧ですますには、得たものは大きいのです。