上と下

山室寛之さんの『野球と戦争』(中公新書)です。
1940年代に、戦時下で日本の野球がどのように困難に立ち向かったか、圧力に負けていったのかを、学生野球や職業野球のいろいろなエピソードをおさえて書かれています。1942年の甲子園での中等野球とか、1943年の最後の早慶戦とかは、この間映画やテレビでも話題になりましたが、そうしたことを全体に広げているところと、戦後の復興にも言及しているところが、新書という器を上手に使っているところでしょう。
さて、戦時中に、野球は圧力を受け、多くの中等学校で野球部が廃部になったりもしたのですが、その〈圧力〉のもととして想定されやすい軍隊では、けっこう野球が行われていたというのです。学徒出陣で兵役についた学生野球の選手たちが、軍隊内でも野球ができたことを回想しているというのです。〈上意をくんで〉、中間が暴走するというのは、けっこうよくある話ですが、野球に関しても、そういうこともあるのですね。