いごごちの悪さ

ミハイル・ブルガーコフ『悪魔物語』(水野忠夫訳、集英社、1971年、翻訳底本は1924年)です。
この人は、終始ソビエト政権に対して、シニカルな眼でみているようです。統治機構がうまくまわっていない姿が、いろいろな手段で描かれます。
やはりおもしろいのは、「運命の卵」で、近未来(1928年だそうです)のソビエトロシアで、鶏が疫病にかかって全滅したので、成長光線を発見した学者から実験装置を借り出して、外国から輸入した鶏卵にその光線を当てようとするのです。当然、物語ですから、間違えて学者の実験室に搬入される予定のヘビやダチョウの卵に光線をかけたものですから、とんでもない事態がおきます。
こういう作品を書く作家を、きちんと機構のなかに位置づけられなかったことが、やはり時代の限界だったのでしょうか。