ひょうたんから

岩波新書『日本の近現代史をどう見るか』です。
井上勝生さんの『幕末・維新』からはじまった、日本近現代史のシリーズの最終巻ですが、たしか最初はある人の個人による〈まとめ〉的なものを予定していたようですが、結果的には、9人の著者によるやや長めの〈あとがき〉集のような感じになって、本が出た後のいろいろな論議を含めたものになりました。これはこれで、おもしろいものでしょう。
この前も、中江兆民の回想を幸徳秋水が書きとめたものに触れましたが、ドラマの内容が、いわば〈国民的共通理解〉として通用してしまうのも、どうかとも思います。もちろん、戦国時代から幕藩体制への変化を、〈平和を求めるひとびとの心情〉として描くことが、大局的にはまちがっていないように、幕末の変革を、国民意識の成立という観点から眺めるのも、そうはおかしくはないのかもしれません。ただ、そこにたとえば開国を尊皇攘夷の観点から批判するような視点が、単純に投入されると、やっぱり今の段階では一面的になるのではないでしょうか。ドラマの人気は高いようですが、それでいいのかとも思うのです。