あったもの

原武史さんの『沿線風景』(講談社)です。
まえに、原さんと重松清さんの対談をここであつかったときも、『滝山コミューン一九七四』のときも、感じたのですが、原さんは、きちんとあったことを記録しておこうとする方のようです。
というのも、一般的な戦後史では、1960年代から70年代にかけての〈多党化現象〉について、まともに考察しないほうがおおいようです。1972年という年に関しても、連合赤軍沖縄返還は述べても、1972年12月の総選挙の話題などでません。
けれども、公明党日本共産党の進出によって起きた〈多党化〉を、原さんはきちんと分析の対象としようとしているようです。この本でも、多摩湖をめぐる西武鉄道線に乗りながら、そこでかつて開かれた赤旗まつりについて考察しようとするのです。
原さんの、現在『考える人』に連載中の考察が、きちんと完成する日を待って、またあらためて考えたいと思います。