内容の選択

大木康さんの『中国明末のメディア革命』(刀水書房、2009年)です。
大木さんは前にも書いたかもしれませんが、私の中学高校の2学年上級の方で、たしか文化祭のときに、〈漢詩のつくりかた〉のような本を読んでいたような記憶がおぼろにあります(ちがっていたらごめんなさい)。
16世紀後半から17世紀はじめの中国で、出版の規模が飛躍的に増大し、それだけいろいろな文学などの可能性が広がったということを、入門書として書いています。
そうした基盤の上に、いわゆる四大奇書(『金瓶梅』にいたっては、『水滸伝』のスピンオフ作品ですから、完璧なフィクションです)といわれる作品がうまれてくるわけで、その点で、中国文学の世界がいわゆる〈漢文〉のわくをはずれることにもなったわけです。
それを可能にした江南の経済的発展についてとか、その後の清の時代の初期にはいくつかの出版関係の弾圧事件があったことにも触れてほしいというのが正直なところなのですが、入門書としての話題の選択ということなのでしょう。本が、この時代に糸で綴じられるようになったということ自体が画期的であることなど、こうした形で知として共有されることは大切なことです。