線引き

丹野章さんの『撮る自由』(本の泉社、2009年)です。
写真家の丹野さんが、自分の経験から、写真を撮るということについて考察しています。写真は一瞬を切り取るものですから、撮られる側とのトラブルもおきやすいものです。そこで、丹野さんは、〈撮影〉と〈公表〉とを区別しようと呼びかけます。世の中にさらしてあるものは撮っていい、しかし、公表となると話は別だというのです。
個人としての使用という点では、撮った写真を外に出さないということも必要なのでしょうし、隠してあるものをあばくことが社会的に意味がある場面もあり得るのでしょうから、どこかで折り合いをつけなければいけないのでしょう。〈個人情報保護〉が一人歩きしすぎる懸念もある時代ですから、ここでの丹野さんの提起は、受けとめるものが大きいようにも思えます。