身勝手

上田信さんの『トラが語る中国史』(山川出版社、2002年)です。
中国東南部、福建省あたりにすむアモイトラの視点から、人間と自然とのかかわりあいを考えるものです。中国東北にはシベリアトラというのがいて、早い時期から保護の対象とされていたのですが、こちらのアモイトラは1950年代に、『害獣』とされ、相当数が〈駆除〉されたというのです。さすがに現在は保護の対象となり、人工飼育が試みられているということですが、この本が出た時点では、〈2010年〉に野生のものは絶滅する危険性が高いのだそうです。実際、どうなのでしょう。
ヨウスコウカワイルカも、ここのところ生存が確認されていないという話をきいたことがありますが、人間の都合で、生物を駆除したり保護したりと、考えてみれば、これもある種の〈業〉なのでしょうか。
日本のトキも、カラスに卵を食べられたり、テンに食われたりと、いろいろとあるようですし。
漢文でよく出る人食い虎(『山月記』もそうですね)自体が、ヒトが森林を切り開き、トラの生育環境に干渉するようになってからのことだそうです。