ゆとり

中野美代子さんの『「西遊記」XYZ』(講談社選書メチエ、2009年)です。
中野さんは、ずっと西遊記の研究をされ、明刊本の翻訳(岩波文庫)もされ、そういう意味では、いままでの研究を、一般書としてまとめたという性質のものです。
西遊記には、いろいろと複雑なしかけがされていて、そこを読み解くところに、おもしろみもあるのでしょう。この時期の中国は、ある意味爛熟といってもいい時期で、西遊記のほかにも、金瓶梅のような、社会の腐敗を描いた作品も現れるなど、ある種の社会批評的な発想もあらわれたのでしょう。
そうした時期に、知的遊戯の一種として、西遊記も登場したと考えれば、流れとしてはわかりやすいのかもしれません。おなじみの材料を駆使して、新しい世界を構築する、それが今もよみつづけられる理由の一端ということでしょうか。