活用

岩波書店のPR誌『図書』に、中野三敏さんがこのところ、和本について連載しているのですが、今回は、ソウルと台北にあった大量の和本を調査しにいったときの話です。
台北のほうは、気候条件が日本より過酷なので、本の傷みがはげしくて、破棄しなければならないものがけっこうあったのだそうですが、ソウルのほうは、本の虫(本当の虫ですよ)がいないので、虫食いがなく、保存に適した環境なのだそうです。
さて、もうお気づきでしょうが、この本は、日本の植民地時代に〈帝国大学〉だったところの旧蔵書です。もちろん、日本で購入したものを現地にもっていったわけですから、現地の蔵書家から召し上げたわけではありません(まさか李朝時代の両班知識人が、芭蕉俳諧の本を持つとは思えませんし、日本で刊行された漢文の本を読むとも考えられません)。
日本に戻せという筋合いでは当然ないですから、当地の研究者のかたに、関心をもってもらうということなのでしょうか。