担い手ふたたび

楜沢健(くるみさわ・けん)さんの『だからプロレタリア文学』(勉誠出版)です。
宮本百合子の「貧しき人々の群」から、鶴彬の川柳まで、プロレタリア文学の作品をとりあげ、読みどころを紹介したものです。著者の立場ははっきりしていて、プロレタリア文学では、満足に小学校も出ていないようなひとびとが、書き手として成長していったところに注目しています。誰もが読み手になり、書き手になる文学運動という側面にきちんと光をあてているところは、大切なものだと思います。
今の民主主義文学運動も、そういう点で、プロレタリア文学運動の伝統を受け継いでいるわけで、そのように、誰もが書き手となっていくためにはどうするかということが、文学運動のあり方として問われたのが、戦後まもなくで言えば、〈勤労者文学〉をめぐる問題でもあり、1950年代では大西・宮本論争でもあるわけです。そういう視点から、もっと文学運動の歴史もかえりみられなければいけないのでしょう。