固有名詞

デイヴィッド・ハルバースタム『ザ・コールデスト・ウィンター』(山田耕介・山田侑平訳、文藝春秋、2009年、全2冊、原本は2007年)です。
前に紹介した『毛沢東朝鮮戦争』が、中国側の政策決定のプロセスを追ったのに対して、ハルバースタムは、アメリカ側の朝鮮戦争へのかかわりを軸にしています。その点で、両方あわせて読むと、戦争の姿がより鮮明になってきます。
そしてなにより、著者は、戦争を、マッカーサー彭徳懐の視点からだけとらえているのではありません。戦争に参加した米軍兵士たちは、アメリカ社会全体が話題にしない中で、朝鮮での記憶を大切にしてきました。著者は、多くのインタビューをとおして、参加した兵士たちが、どの土地で、どのように戦ったのかを掘り起こしています。中国がわの証言が得られないという現状では、これが限界かもしれません。けれども、そのひとりひとりの声が、この戦争を語っています。