ごった煮

岩波文庫の『明六雑誌』(全3冊、山室信一・中野目渡校注、上は1999年、中は2008年、下は2009年)です。
最初に出たときには、雑誌全冊活字化ときいて、そういうのはありかとも思いましたが、いちおう、全部出てみると、1870年代の日本が、けっこう浮かび上がってきます。
明六社では、会合の日に、講演会を実施して、その内容を雑誌に載せたものもあるので、文章が言文一致になっているものもあるのは、予想外でした。この方向が継続していれば、ひょっとしたら、日本語表現の歴史も変わったのかもしれません。
議会はどうあるべきかという議論もあれば、死刑廃止論もあり、それもおもしろいものです。
雑誌自体は、43号で終刊となるのですが、そのきっかけは、政府が出した、讒謗律などの弾圧法令だというのです。成島柳北にも〈辟易賦〉という、言論弾圧をからかった文章(『日本近代思想大系』(岩波書店)のどこかにあります)がありますが、明六社の人びとには、そうした形で逃げることはできないほど、弾圧の危機感は高かったようです。
日本には、この時代、別の道もあったのかもしれません。