歩く速さ

旭爪あかねさんの『月光浴』(新日本出版社)です。
『稲の旋律』からはじまる三部作のラストになるのでしょうか、主人公の女性の、周囲とのかかわりを描いています。『稲の旋律』では、引きこもりに近い状況で、他者とかかわりをもつことに苦しんでいた主人公は、この作品では、自分のペースを守りながらも、不登校の子どもたちの居場所に顔を出したり、産直野菜の購入者向けの通信に文章を書いたりと、踏み出してゆきます。
初出の雑誌では、やや性急かなと思わせる展開もなくはなかったのですが、単行本になるときに、ずいぶん整理したようで、物語のすすみゆきが、自然らしくなっています。初出誌をベースにした話は、今後しないほうがよさそうですね。