早生まれ

大江健三郎さんの『水死』(講談社、2009年)です。
といっても、別のところで書くかもしれないので、ここでは単純なことを。
巻末の著者紹介のところに、〈1935年1月、愛媛県生まれ〉(原文縦書き、漢数字)とあります。つまり、大江さんは、1941年に国民学校に入学した、国民学校の1期生なのです。井上ひさしさんも同学年だったと思いますが、この年度の人は、入学から卒業まで国民学校で、小学校ではなかったという体験をされているのです。
これは、けっこう大事なことで、作中に、『金枝篇』を引き合いに出して、〈古い王を殺して新しい王を迎える〉という発想に、古義人少年が堪えられないという展開になるところがあるのですが、そのポイントが、古義人がかつては軍国教育を叩きこまれていたというところと関係するのです。
今までの大江さんの本で、著者紹介に生まれ月まで書いてあったのは少ないと思うのですが、今回、〈1月〉と明記したのにも、作品を読むときのヒントがあったのですね。