ささやかな願い

年が明けました。今年がよい年でありますように。
安丸良夫さんの『日本の近代化と民衆思想』(平凡社ライブラリー、1999年、親本は1974年)です。
江戸時代の、一揆などの思想や、民衆のなかの考え方に、その後の日本社会につながるものを見つけようとする試みです。
民衆の中の、〈勤勉〉を大切にする思想は、幕藩体制そのものの変革というところには行かないものの、自立した個人をつくるうえで、意義があったはずだと、いうのです。
もちろん、〈勤勉〉〈努力〉をとうとぶ考え方は、ひとつまちがえると、〈自己責任〉論につながる危険性もあるのでしょうが(その点では、以前ふれた『ストリートの思想』とは対極的かもしれません)、それが日本人の遵法精神とか、選挙などを公正に行う事務処理能力とかと、結びついているようにも思えます。一揆の打ちこわしなどにも、統制のとれた行動をしてみずから律することができたことも、いろいろな事例が挙げられていますが、そういう、日常の些事をきちんと遂行することの大切さは、これからも意識しなければいけないのかもしれません。
江戸時代の理想の中に、小規模経営の農家が平準的にあることがあげられる(ある意味、安藤昌益もそういう流れと無縁ではないのかもしれません)のも、そうした、日常の勤勉さとかかわるのかもしれません。その点で、戦後の農地改革のもった意味は、もっと大切にされなくてはいけないのでしょう。