文字で聞く

井上ひさしさんの戯曲を掲載するのが例になっている『すばる』ですが、1月号で「組曲虐殺」が掲載されました。
上演にはいかれなかったので、いろいろな人の感想などみてきたのですが、これで、お芝居の内容がわかります。もちろん、音楽は誌上では再現できませんから、歌詞で考えるしかありません。それはやむをえないことですね。
多喜二の姉と、瀧子さんとふじ子さんとが、3人で相談して、というのはもちろん、井上さんのつくった設定ですが、それをきちんとふまえていれば、そうした虚構にこめた、作者の意図もわかるように思います。
弾圧で非公然の活動に追い込まれても(それが、文化運動そのものが弾圧されたところをもう少し書いてほしかったという感じはします。「作者の名前はまだ伏せ字になってない」という作中人物のせりふがありますが、実際には、プロレタリア文学の雑誌には、多喜二は本名では書けなかったのですから)、書き続ける多喜二の姿は、きっと舞台の上でも輝いていたことでしょう。