はしか

坂の上の雲』に関してですが、中塚明さんの『司馬遼太郎歴史観』(高文研)と、中村政則さんの『『坂の上の雲』と司馬史観』(岩波書店)と続けてしまいました。
どちらも、司馬さんが書かなかったことと、当時は知られていなかったけれど、40年の研究の発展によってわかってきたことを、軍の関係や朝鮮半島をめぐる問題などとあわせて、読みやすくまとめています。東学農民戦争の記念がどうされているのかとか、東郷艦隊がバルチック艦隊を待ち受けているときに、朝鮮半島南部の鎮海湾にいたのですが、そこが実際どうなっていたのか、いまはどうなっているのかを現地で確認したとか、現時点からの報告にもなっています。
そう思うと、〈司馬史観〉というか、『坂の上の雲』という作品自体が、いわば麻疹のようなものかもしれないとも思うのです。〈馬〉さんからコメントをいただきましたが、同年代の江川達也福田和也の動きをみると、きっと同じ頃に『坂の上の雲』に触れていたのではないかと思えるのです。麻疹は、うまく免疫がつけば、子どもの頃に罹るほうがましで、おとなになってから罹るとけっこう重症化するところも、藤岡信勝さんの逆上ぶりをみると、似ているかなという感じもします。
今回のドラマ化が、反面教師としてかえって歴史の真実を知っていくことにつながるのなら、それはひとつのエピソードとして、後世振り返ることができるかもしれません。そのためにも、きちんと知るべきことは知っておくべきなのでしょう。