誇り

井上文夫さんの『時をつなぐ航跡』(新日本出版社)です。
飛行機の客室乗務員の労働実態と、そこからくる職業病としての腰痛を、労働災害として認めさせるたたかい、そのなかでうまれた組合分裂とそれを使った労務管理のありようと、いまの航空界をめぐる状況を描いた小説です。
客室乗務員といえば、25年くらい前に、堀ちえみが主人公の青少年向けのテレビドラマが話題になったこととか、この航空会社をモデルにした『沈まぬ太陽』があるとか、いろいろと世間的な評判というものもありますが、そうした派手なものとは別に、労働者の職務に対しての誠実さが、資本の論理にとってはかえって妨げとなってしまうという、資本主義のシステムそのものがもつ問題が、この作品にはあらわれています。
飛行場の問題がここ数日世間的な話題になっていますが、24時間空港をあけることは、そこで働く人たちや、飛行機を直接飛ばす人たちの、働き方の問題でもあるわけです。そうした議論ぬきで、羽田だ成田だ関空だといっても、それは〈面子〉の問題でしかないでしょう。鉄道の夜行列車を走らせるというレベルのこととはちがうはずです。