残す

中野三敏さんの『和本の海へ』(角川選書)です。
江戸時代の本は、活字に翻刻されていないものがけっこう多いので、そうしたもののなかから、著者が面白そうなものを紹介するというものです。
考えてみれば、江戸時代のスタンダードだった、行書体と〈変体仮名〉の表記は、学生時代に一応は習ったはずなのですが、その後はとんとご無沙汰してしまっているので、こうしたものも、先学の紹介にあずかるしかない、(自力で発見できない)というのも、さびしいような気もします。
江戸時代の人が、いろいろなことを書き残しているというのは、日本人の記録好き(ある意味では21世紀のブログ流行とも共通する面があるのでしょう)のなせるわざとは思いますが、それが、300年残るのも、和紙と墨との力もあるのでしょう。
今の、電子データのほうが、実は危ういかもしれないと、前にも書いたかもしれませんが、こうしたものを読むと、あらためて紙媒体の力を感じてしまいます。