スケールの大きさ

森まゆみさんの『女三人のシベリア鉄道』(集英社)です。
『すばる』連載中にも、ロシアの現状を書いた部分を取り上げた記憶もありますが、改めて通して読んでみました。
与謝野晶子中条百合子林芙美子の三人を軸にしているのですが、それと森さん自身も加わって、日本のすぐれた女性文学者4人の旅行という、ぜいたくなつくりになっています。それぞれが経験した時代によって、ロシアやヨーロッパへの対応は当然違うわけですが、それも、この100年間の激動の反映でしょう。四人の前に現れるそれぞれの国の姿は、その時代をほうふつさせます。
今は、昔のように、シベリア鉄道が中国領内を通過することもないですし、釜山から中国まで直通の列車も当然ありません。いっとき、ソウルからケソンまでの陸路が開通したときは、ひょっとしたらとも思ったのですが、これも前途多難なようです。そうしたゴタゴタが解決され、誰もが地球上を自由に動けるときが、早く来ることを願いたいものです。