プロセス

渡辺和靖さんの『保田與重郎研究』(ぺりかん社、2004年)です。
保田の、初期の作品を分析して、彼の思考がどのように先人のものを受け継いでいるのかということを論証しています。
保田は、奈良県桜井市に生まれ、県立畝傍中学から大阪高校に進んだのですが、その経歴は、必ずしも最初から古典に親しむという環境だったとは、必ずしも言い切れなく、その点では、当時の旧制高校生のように、和辻哲郎とか、岩波文庫の古典や社会科学ものや、中野重治のようなプロレタリア文学だったりとか、そういうものの中から、自分なりの思考を発展させてきたのだというのです。
そうした、先人の思考を、換骨奪胎しながら論じていったところに、当時、保田の文章が、一歩先にでたもののように思われ、人気を博したのかもしれません。