真実はあらわれる

田村泰次郎(1911-1983)『肉体の悪魔・失われた男』(講談社文芸文庫、2006年、文庫編集オリジナル)です。
作者の戦場体験をモチーフにした作品で、〈純文学〉に分類できそうな作品を集めています。最近、尾西康充さんが田村に関する研究をされているということで、それで初めて、読んでみようと思ったのです。
中国戦線における、日本軍の所業に関しては、いろいろなことが書かれ、それに対するバッシングもひどいようですが、「蝗」という作品では、朝鮮人慰安婦〉を前線部隊に送り届ける任務をもった日本軍の部隊が描かれます。こうした作品の存在だけでも、バッシングする人たちの道理のなさは明らかだと思うのですが、それを通じて、人間のありようも問われているのでしょう。

そういえば、15年くらい前には、織田裕二が出演した映画の「きけ わだつみのこえ」でも、フィリピンで織田たちと一緒に敗走する朝鮮人慰安婦〉がいましたけれど、最近はそうした映画をつくるのも難しいのかもしれません。