細心さ

島崎嗣生さんの『愛と平和の文学教育』(本の泉社、増補版)です。
著者は都内の私立校で英語を教えていらっしゃるのですが、その中でチャップリンの映画を材料にして、英語の学習の中での実践記録などが収められています。
また、大学時代専攻したドイツ文学についても、ブレヒトの『ガリレイの生涯』についての論考もあります。今回、旭爪あかねさんの作品についてふれた文章などを増補されているようです。

ガリレイの生涯』から、科学者(知識人)の責任として、自分の論理の転回は、自分だけでなく、ほかに与える影響を視野に入れなければならないというところを取り出した論は、注目すべきものがあります。実際、河上肇中野重治の出処進退を考えたとき、そうした影響からみる考え方は、大切なものでしょう。ただ、ブレヒトのドイツと、日本とは全く同じではありませんから、そこはよく見なければいけませんし、最大に批判されるべきは、転回を強いた権力の側だということを忘れてはいけません。重要な提起として考えるべきでしょう。

そういう点でも、実践記録としてのおもしろさでも、なかなかおもしろいのですが、誤植(誤変換)が、とくに増補された部分に少しあるのが気になります。とくに、『稲の旋律』を論じた文章で〈慎平〉と書かれると、ちょっと待って、といいたくなります。そうしたことへの配慮は、してほしかったですね。